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世界のモダンハウス

世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。

【第22回】チェコの村にある森の家

1階はコンクリート造で片側が大きく開けた箱のつくりに、2階はレンガ張りのカントリー調の切妻屋根という対象的な様式を融合させた家

 中央ヨーロッパにかつてあった、チェコスロバキア。もともとはチェコ共和国とスロバキア共和国が一緒になってできた国である。古城とビールとアニメが有名なこの国が1993年にまたチェコとスロバキアの二つに分離したことは日本ではあまり知られていないかもしれない。チェコの首都であるプラハは中世以来の景観が今も色濃く残る文化都市として知られている。そのプラハの東、中央ボヘミア地区にある、ペトジーコフ村の端にこの家はある。

 設計したのは、スロバキアの首都ブラチスラヴァに事務所を置く建築事務所、チャコフ・アンド・パートナーズ。施主は若いご夫婦で子供が2人の4人家族。さらに子供が増えることがわかっていた。大都市のベッドタウンによくある小さな家ではなく、限られた予算内でデザイン性の高い家を施主は希望した。チェコでそのような家は、総敷地面積2,000平米(建築面積500~600平米)で、住宅はそのうち10%程の230平米を占めるものが多いという。

出展:google map
 

モダンとカントリーの融合したスタイル

1階の大開口部分は、リビングからデッキスペースへ一体に繋がる共有空間。

 広大な敷地に建つデザインセンスの高いこの家は、コンクリートとレンガ張りが融合したミックス・スタイルの家だ。1階はコンクリートの壁が寄せ集められたような箱が連なり開口も多い。その片側は大きく開けている。そのモダンで直線的なコンクリート部分を土台に、レンガ張りのカントリー調の切妻屋根の家を乗せている外観は非常に面白味がある。

コンクリートの壁の奥が
エントランスとなっている。
コンクリートの壁は外側に向けて
ベンチシートになっているのが特徴的。

 1階のエントランスに通じるコンクリート壁は、外側に向けてベンチシートとなっており、腰座の下には暗くなると照明も灯され、玄関へと人を誘導するようなデザインとなっている。

一階のコモンスペース(共有空間)と呼んでいるリビングの大きな開口。
正面の壁面にはピクチャー・ウインド(物見窓)を設け
室内からも景観を楽しめる工夫を施した。
クッション張りの腰掛から外側のデッキへ繋がる。

 家は敷地の北東にあり、道路からの距離は十分にあったが、近隣の住宅からのプライバシーを保つと同時に近くの森の風景など景観を楽しめる配置とデザインが求められた。その特徴がよく出ているのは1階のコモンスペース(共有空間)と呼んでいるリビングの片側の大きな開口。この開口はデッキと一体化している。開口からデッキを通して自然と融合することで、環境との一体化を図っている。さらに、暖炉のある壁面には大きめのピクチャー・ウインド(物見窓)がつくられている。ここは真下がクッション張りになっているので、リビングの一部となっている。

自然を大きく取り込む大開口

 家の構成を平面図で見ると、1階のエントランスを入ると左側にリビング、ダイニング兼用の「コモンスペース(共有空間)」があり、その右側にはガレージとトイレ、機械室がある。

床、キッチン、壁面収納が木製で一体感。
カラーも茶・黒・白・グレーに統一されて
落ち着いた空間が広がる。
LDKから通じるコモンスペース(共有空間)。
ブラウンのカーテンはデザイン性の中にも
実用性を重視したアイデア。

 リビングはコンクリート打ち放し部分は少なく、壁を設けており、フローリングに木の椅子を合わせて温かみがある。キッチンまわりの収納もすべて木製の扉で覆われ、キッチン・カウンターも同じ木張りを使用することで統一感を出し、スッキリとした印象を与えている。

 室内は、茶、黒、白、グレーと色数が少ないので落ち着いた雰囲気である。写真から分かるが、ブラウンのカーテンを設置しているのが面白い。多くのモダン住宅では、カーテンは使わない居住者も少なくないからだ。強いて使うならカーテンよりもブラインドを好む傾向があるように思うが、これは実用的だ。住んでみるとわかるが、開口丸出しで遮蔽しない生活というのは特に都市部では住みにくい場合が多いものである。ウッド・デッキには専用のソファも置いて、戸外の食事なども可能にしている。

施主希望のガレージ。玄関に入って直ぐの右手側にガレージへの入口がある。

 残念ながら、2階は公開されていないので写真ではわからないが、2階には4つのベッドルームと2つのバスルームがある。それぞれ違う素材とデザインをしているそうだ。また、施主は車を一台持っていたが、そのためのガレージをつくることは必須の条件だったという。これだけの敷地があれば、プールや庭園用の東屋をつくることも可能だったと建築家は言うが、ガレージにこだわりがあったようだ。

 デザインセンスの高い人が増えている時代、ハウスメーカーでもそのニーズを汲み取ってさまざまなスタイルをモデルハウスに取り込み、内装も細部にまでこだわりバリエーションを増やしている。住宅展示場で実際に見て、確かめて見るのも楽しいだろう。

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