世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。
【第2回】素材を極めた光の家
コンクリートのハードな外観ながら、大きなガラス面の抜け感とS字を描いた一定のリズムを感じるデザインでバランスの調和が取れている。
2015年11月
ハイテク都市の豪邸
イスラエルの中心的な都市であるテルアビブ市の東に隣接する都市、ラマト・ガン。そこには数多くのハイテク企業の高層ビルがひしめくようにそびえ立ち、世界的にもダイヤモンド取引所のある場所として知られている。その中心街から少し離れた住宅街に緑の木々に囲まれて立つ敷地500平米の戸建ては、日本式に言えば豪邸と呼ばれる住宅だろう。
コンクリートとガラスのダイナミックさ
室内を映し出して落ち着いた雰囲気を見せる。
無彩色の打ち放しのコンクリートがその素材感を表出させるかのように佇む姿を遠くから眺めれば、ひとつの大きな石の塊かモノリス(巨岩)のようにも見える。しかし、近づいてさらに立面をよく見れば、あるリズムをもってレイヤーが重ねられていることが分かる。コンクリートは天井高のある一階の床から天井へと、そして2階へとS字を描いて連続していく。各階の開口には最大限の大きさにとったフレームなしのガラスが広がり、「透明な壁」として空間をつくりだす。ガラス越しに三面から光がさしこむリビングは、外の自然を感じさせ、とても開放感がある。ダイニングや階段など家の中のいたるところが光で満たされている。住む人にとってはガラスを見通すことで空間はより立体感を増し、視点の置きどころ次第で一層ダイナミックに見える。
多面性をもつ住宅
道路側のフロントファサードではコンクリート面が直立して訪れる人と対面する。その窓にはヴァーチカル・ブラインドがかかっており、プライバシーが守られているので禁欲的でスタティックな印象だ。いっぽうプールもある建物の奥のリビングを中心とする反対側の面は思いきりオープンになっており、その対照も効果的だ。住宅は内部の生活を外にどう見せないか、あるいは見せるか、その二方向から考えることが重要である。
室内は白を基調とし、作りつけの本棚や照明フードやアイランド・キッチン、ダイニングのテーブルやチェアも白。リビングのソファはマットなグレーを使い、そのほかの調度品も暗色のものを選び、モノクロームのカラースキームで統一。アクセントとしてビビッドな色のクッションなどを置いているところに住人のセンスの良さが感じられる。リラックスできる落ち着いたトーンでまとめられている。
この家は自然の取り込み方も絶妙で、建物の内外に木々があるだけでなく、リビングのテラスを囲むように配された樹木は、プールの存在とあいまって、ちょっとしたリゾートの雰囲気もイメージさせる。2階のベランダ前には丈の高い草を水田のようにくまなく植え、これはプライバシーを隠すフェンスの役割もしている。
住宅展示場にはさまざまなライフスタイルを提案するモデルハウスが並んでいます。かつての建売りと違い、今では建主の多様なニーズや条件を活かせるモデルハウスが展示されています。オプション次第では建築家も顔負けの家をつくることも可能である。自分の希望をどう叶えてもらうか、まずは住宅展示場で情報収集するのがスマートな家づくりの第一歩となる。
- A concrete cut, Ramat Gan, Israel
- http://www.archdaily.com/773876/a-concrete-cut-pitsou-kedem-architects
- Architect:Pitsou Kedem Architects (http://www.pitsou.com)
- Photos:Amit Geron
- Text:Masaaki Takahashi