ライダース・パブリシティが運営する全国の住宅展示場ガイド【家サイト】

世界のモダンハウス

世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。

【第1回】温かみのある湖畔のモダニズム

ロケーションは湖から数分の斜面。二層構造だが機能のない半地下階は外から見ると埋め込んだように見える。

湖のパノラマを臨む立地

ドイツ東北部、ポツダム。第二次大戦終結の宣言が出されたことで歴史に、その名を刻まれたこの都市は、観光地としても知られている。風光明媚な湖や川、避暑用の夏の宮殿などがある。

 この家はこれ以上のぞめないほどの美しいパノラマ絶景を臨む丘の斜面に立つ。湖までは道路を挟んで歩いて数分。地上一階だが二層で半地下階のある落ち着いた佇まいの湖畔の住宅だ。

 建築面積は100平米と比較的コンパクトであるが、圧力加工したコンクリート・スラブ屋根を載せて荷重を内部の袖壁、仕切り壁、三本の柱に分散させており、外部には壁や柱をいっさい露出させていない。設計した建築家は、この建物の形状をサンドイッチに例えている。内部をすっきりとさせながらスペースは可能な限り確保している。平面でも普通なら単に直線となるような所をあえて鈍角のジグザグをつけて単調さを免れている。

テーマは「レス・イズ・モア」

ミース・ファン・デル・ローエのメタルと黒のレザーを使った
定番応接セットがしっくりとくるリビング。

 四方をガラス張りの開口に囲まれ、床などの構造的な要素はすべてコンクリートの打ち放しである。ガラス面は湖に面する側は透明のものを使っているが、山側では半透明のものを用いている。家全体が環境に対して大きく開いており、自然を取り込んで一体化しているので、実際よりもゆったりとした印象だ。
 設計者が、ここで考えたデザイン上のテーマは「レス・イズ・モア(Less is more)」だと言う。これは、20世紀を代表する巨匠建築家の一人、ミース・ファン・デル・ローエの言葉である。いまやモダニズム建築の原則のひとつとなった格言で、無駄なものを極力省きシンプルにすることで逆に豊かさを生み出すという考え方を言ったものだ。

内部の木の壁面が温かみを与える

 室内で特徴的なのは、なんといっても寝室やキッチンに置かれた背の高い大きな収納家具。家具というにはあまりに大きく、まるで小屋のようだ。作り込まれたウォークインの収納だが、これが建物内で間仕切り壁として機能している。


大きな箱のような収納が室内では仕切り壁としても機能し、
下層への階段もこの中にかくされている。

 通路側では書棚になり、バスルームもつくっている。材料は中近東の国、シリアのアレッポに産する松で、素材感を生かすためペイントでの塗装はしていない。コンクリートだけではとかく冷たくなりがちな空間に、この明るい色の木材が温かみを与えている。この一工夫で一歩先をめざすスタイルとなっているとも言える。ルーフテラスとなる下の階に出るには、この収納にある隠し扉を開けて階段を使わなければならない。これも隠れ家の気分を演出してくれると施主に喜ばれたことのひとつ。

 ガラスとコンクリートによる先端的なモダン住宅だが、その内部では家族がリラックスできるしつらえが十分に取り入れられている。浴室の美しいタイル、間仕切りの天然の木、あえて新しいつくりつけにしなかったキッチンまわりなどには施主の希望が素直に表現されている。家づくりは、建てる人が自分の希望、家族の生活やこだわりを具体的なかたちにまとめる作業だ。
 たとえば、住宅展示場には様々な家があり、そのひとつひとつには、施主の希望をかなえるヒントや工夫がある。まずは、そうしたところに足を運んでみるのがよい。楽しみながら家づくりのコツが分かるだろう。

おそらく大半は前の住居からそのまま運び入れたであろうと
思われるキッチンまわり。親しみを感じさせる。
藍色のタイル張りになっているバスルーム。リラックスするための
空間は打ちっぱなしコンクリートにはしていない。

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