2022.5.31更新
住宅購入者が利用できる優遇制度はたくさんありますが、2022年に新しくできる「こどもみらい住宅支援事業」も覚えておきたい制度の1つ。子育て世帯や若者夫婦世帯が住宅を購入する際の負担軽減と、省エネ性能の高い住宅を広める目的で作られました。
日本は2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにすること(カーボンニュートラル)を目指しています。その実現に向けた1つの施策でもあります。
本制度はリフォームを行う場合にも利用できますが、今回は住宅を新築する場合の「こどもみらい住宅支援事業」について解説します。
1.子育て世帯や若者夫婦世帯の住宅新築に最大100万円の補助金
❶ 対象者
❷ 補助金の額
2.こどもみらい住宅支援事業の対象になるのはどんな住宅?
❶ ZEHなどの住宅
❷ 高い省エネ性能を有する住宅
❸ 一定の省エネ性能を有する住宅
「こどもみらい住宅支援事業」では、子育て世帯や若者夫婦世帯が省エネ性能の高い新築住宅を建築・購入すると、補助金が交付されます。本制度を利用できるのは「子育て世帯」または「若者夫婦世帯」のみ(図表1)です(新築住宅を建築、購入する場合)。
建築を担当する施工業者(ハウスメーカー等)が本事業に事業者登録をしている必要もあります。
補助金の額は建築・購入する省エネ住宅の種類ごとに決められています(図表2)。ZEHなどは100万円、認定長期優良住宅など高い省エネ性能等を有する住宅は80万円となります。
❶ZEHなど(Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented含む) (強化外皮基準かつ再エネを除く一次エネルギー消費量▲20%に適合するもの) |
100万円 |
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❷高い省エネ性能等を有する住宅 (認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅) |
80万円 |
❸一定の省エネ性能を有する住宅 (断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4の性能を有する住宅) ※2022年6月30日までに工事請負契約を締結したものに限る
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60万円 |
なお、補助金の申請はハウスメーカーが行い、補助金を受け取るのもそのハウスメーカーとなります。補助金の分が皆さん(建築主)に還元される(工事代金に充当され、割引される)形になります。
こどもみらい住宅支援事業の対象となる住宅は図表2にまとめたとおりですが、それぞれの条件と内容をもう少し詳しくみていきます。
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギーハウスのことで、図表3のようなイメージの住宅です。断熱などの工夫で省エネを実現させるとともに、太陽光発電などでエネルギーを創ることで、その住宅で使うエネルギー量を実質的にゼロ以下にすることを目指した住宅です。
なお、図表2の( )内に記載した、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Orientedというのは、ZEHに近いが、ZEHの基準を満たすまでにはいかないものです。たとえばZEH Orientedは、東京23区などで狭小地に住宅を建てる場合、ZEH基準を満たす断熱性・省エネ性を備えていれば、太陽光発電などの設備がなくても、広義のZEHとして認定されます(狭小地に建てる住宅だと屋根の面積などによっては十分な発電量が期待できない場合があるため)。
認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、性能向上計画認定住宅のいずれかの住宅を指します。長期優良住宅は長期間、良好な状態で使用するための措置が行われている住宅のこと。省エネルギー性だけでなく、耐震性など図表4にある7つの項目に関して定められた各基準をクリアすると認定を受けることができます(戸建ての場合)。
認定長期優良住宅は、一般の住宅と比べて、住宅ローン減税の最大減税額が大きくなる、固定資産税の優遇がある、など本制度の補助金以外にもいくつか優遇措置が設けられています。
断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4の性能を有する住宅のことです。
「一定の省エネ性能を有する住宅」の新築については、2022年6月30日までに工事請負契約を締結したものに補助対象が限定されているのでご注意ください(より高い性能を有する省エネ住宅への支援を厚くする目的のため)。
なお、ハウスメーカーで住宅を建てる場合は、②や③の基準を満たしていることが多いです。
最後にこどもみらい住宅支援事業を利用する上での注意点をまとめます。まず注意すべきはスケジュール。2023年3月31日までに交付申請をする必要があります。
注文住宅を建てる場合、工事の開始までには、土地を探して、依頼するハウスメーカーを決定し、間取りなどの仕様や工事金額を決め、工事請負契約を結ぶ必要があります。本制度を利用する場合、早めに、住宅購入への動きを開始した方がよいでしょう(土地探しから行う場合は特に)。
工事請負契約 | 2021年11月26日(※)以降 |
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着工 | ハウスメーカー等の事業者登録以降 |
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交付申請の予約(任意) | 遅くとも2023年2月28日まで (予算の状況次第) |
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交付申請 | 遅くとも2023年3月31日まで (予算の状況次第) |
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完了報告 | 2023年10月31日まで |
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その他に注意すべき点として、他の優遇制度との併用ができるかどうか、という点があります。住宅ローン減税などは併用可能ですが、ZEH支援事業等の補助金との併用等はできません(図表6)。
2022年度のZEH支援事業ではZEHだと55万円、ZEH+だと100万円の補助金が利用可能です。また次世代ZEH+実証事業では100万円、次世代HEMS実証事業では112万円の補助金が利用できます(各事業においては、蓄電システムを導入する場合等に補助金額の加算があります)。
こどもみらい住宅支援事業の補助金はこれらの補助金と併用はできないので、ZEHを検討している方はハウスメーカーに相談するようにしましょう。
優遇制度 | 併用可否 |
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住宅ローン減税 | ○ |
地域型住宅グリーン化事業 | × |
ZEH支援事業・ 次世代ZEH+実証事業・ 次世代HEMS実証事業 |
× |
なお、こどもみらい住宅支援事業は一定の要件を満たすリフォームを行う場合にも利用できます。リフォームの場合、対象者は「子育て世帯」「若者夫婦世帯」に限りません。最大30万円(「子育て世帯」「若者夫婦世帯」の場合、最大45万円で既存住宅購入を伴う場合最大60万円)の補助金が交付されます。リフォームの場合は、2023年3月31日までに交付申請が必要です。
今回はこどもみらい住宅支援事業について、住宅を新築する場合(新築住宅を購入する場合)をメインに解説をしました。住宅は年々省エネ化する方向に向かっており、これから住宅を建てるなら省エネ性能を持つものにしたいところ。それを考えるとこどもみらい住宅支援事業は、子育て世帯、若者夫婦世帯に該当する方には利用価値のある制度だと言えるでしょう。