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【2020年度 災害対策/レジリエンス コラム第12回】災害に強い家を建てる前に、まず最初に考えるべきは「立地条件」

今回のテーマは住まいの「立地条件」についてです。土地から探して家を建てる場合に、どのような土地を選んだらよいのでしょうか。立地条件に求めるものとして、最寄り駅までの距離やスーパーなど買い物の利便性を考慮した周辺環境によるものと、日当たりや高低差、隣接の建物環境など、その土地特有のものがあります。
近頃は、せっかく良い家を建てても浸水等の水害で被災してしまうケースもありえます。そうならないためにも今回は、災害に強い家にするための土地の選び方についてお伝えします。

【1】災害対策で重要な、土地選びのポイント

数十年に一度しかない災害だったとしても、その被害の大きさは底知れません。大雨による河川の氾濫、土砂災害など被害の大きなものは主に「水」によるものが多いといえます。住まいに大きなダメージを与える災害から守るためには、まず、その土地が災害に強いかどうかも重要なポイントです。

 

■地盤の高さや周辺との高低差をチェック
行政庁のホームページなどで、河川等の過去の氾濫状況を確認することが可能です。治水工事等で氾濫による被害は少なくなってきているものの、過去にどのような被害があったか確認することが必要です。
2019年10月に二子玉川付近で起きた多摩川の氾濫は、「外水氾濫」と呼ばれています。対して下水道の雨水排水能力を上回った場合に起こる氾濫もあり、「内水氾濫」と呼ばれています。実は東京都の水害の80%が内水氾濫によるものです。(国土交通省2004年調べ)

これらの氾濫から住まいを守るには、水が集中するエリアを避けるだけでなく、地盤の高さについても同様に注意が必要です。道路よりも地盤が高くなっていれば水の侵入を防ぐことも可能です。あわせて、周辺との高低差を確認してみましょう。周辺との高低差がある場合、水は高い方から低い方へ流れ込むため冠水することも考えられます。たとえ地盤が高くても、高低差のあるエリアは過去に冠水事例などがないか役所に確認することをおすすめします。
 

■地名に「水」、「がけ」に関連する文字が入っている場合には注意。
沢・谷など水に関連する地名は、昔から水が出やすい場所だった可能性が高いです。代表的な例として、「渋谷駅」は渋谷川の谷底に位置しており、豪雨の際に駅前が水浸しになることもしばしばあったようです。最近では治水工事で改善はされているものの、過去にどのような被害があったか、行政庁のホームページなどで確認してみましょう。 また、がけなどを連想させるような土地の地名についても同様に注意が必要です。確認できる場合は、昔の地名が記載されている古地図なども見てみましょう。

「〇〇ヶ丘」や「〇〇台」といった地名は、がけ地を開発して分譲している可能性もあるため、地すべり等が発生しないか現地を視察するなど周辺環境を確認した方が望ましいです。また、分譲されているキレイな整形地でも、以前は崖だったところを整備していることも少なくありません。その例として、ひな壇上の開発地は、大きな地震等があった場合にはその擁壁の安全性が問題になりかねません。簡単にチェックする方法として、図面通りに工事が行われたことを証明する「検査済証」があるかどうか確認してみてください。将来建て替えるときには、その擁壁の安全性を書類上で確認する必要があり、安全性が確保できない場合は、使える広さが変わってきます。
管轄の行政庁の窓口で「検査済証」の有無を調べられることもありますので、ぜひ確認してみてください。
 

【2】ハザードマップでチェックするポイント

ハザードマップは自然災害が起こりそうなエリアを事前に確認できるツールで、「総合危険度」をあらかじめチェックできるようになっています。仮に台風などが近づいた場合に、避難行動の指針としても効果的です。「水害」については水防法の中で想定区域の指定が義務付けられています。土砂災害防止法の中では、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域の指定が義務付けられています。ハザードマップの作成状況としては、高潮はまだ作成が進んでいない市町村が多いですが、洪水、津波、土砂災害などは多くの市町村がハザードマップを作成し公表しています。

今回は、家を建てるための土地探しの中で、ハザードマップのチェックポイントを確認していきます。

■ハザードマップのチェック方法
まずは自宅にハザードマップがあるか確認してみましょう。なければ各役所またはホームページなどから入手可能です。

<図1>

出典:東京都防災ホームページ

主に色分けがされており、図1の「オレンジ」色は被害が出やすいエリアとされています。また災害の種類としては、主に以下のものを想定してハザードマップは作成されています。

1. 洪水被害   浸水
2. 津波・高波  津波・高潮
3. 土砂災害   がけ崩れ、土石流
4. 地震災害   地震の影響
5. 火山噴火   活火山の噴火

検討している土地、または自分の住んでいる地域に起こりうる災害をハザードマップで調べて確認しましょう。

 

<図2 自宅が災害のおそれがあるエリアの場合、避難経路もしっかり確認しましょう。>
出典:東京都防災ホームページ


「該当エリアが浸水や土砂災害のおそれがある」「該当エリアが浸水や土砂災害のおそれがあるエリアに近い」場合には、総合的に判断し安全性が確認できるのかどうかチェックをしましょう。図2を例として (1)自宅と(2)自宅は、災害のおそれがあるエリアに入っていないことが確認できます。土地を選ぶ場合は、できるだけ被災の可能性のあるエリアを避けることが大切です。また、避難場所なども記載されていますので、万一の場合の安全な避難経路もチェックしておきましょう。

なお、ハザードマップは各役所のホームページ以外にも、東京都や国土交通省のホームページでも入手できます。ちなみに防災マップのアプリもあります。最新の災害情報はもちろんこと、周辺の各種防災施設の情報や災害時の帰宅支援機能などもありますので、いざという時に安心です。

 


画像提供元:東京都防災ホームページ 「東京都防災アプリ」


■ハザードマップを活用するにあたっての注意点
ハザードマップで危険エリアに指定されていないからといって安心してはいけません。被害の想定エリアはあくまで「想定」でしかなく、実際に災害が発生した後でなければ分からないのが実情です。ちなみに、土砂災害ハザードマップでは実際に人が住んでいないエリアであれば、危険箇所には指定されませんので注意が必要です。また、ハザードマップの想定を超える災害が起こらないとも言えません。

土地を探す場合には、ハザードマップを1つ指針に、地盤の高さや地名、周辺環境も確認したうえで選ぶようにしましょう。

 

【3】災害情報以外にも、資産価値も同時にチェック

住まいの立地を考えるうえで、災害に強い場所を検討するだけなく資産としての価値を維持できるかどうかの確認も必要です。 今はリモートワークが普及し、働き方が変わりました。以前であれば職場や駅までの距離に重点がおかれていましたが、そうではない土地選びが増えてきたそうです。そのため人気のあるエリアも今後、変わる可能性があります。今までは、鉄道の主要路線の駅近物件や、都心に近いエリアが人気でしたが、ちょっと郊外の環境に良いエリアの方が人気が出てくる可能性もあります。 郊外生活を送る人が今後増えてくれば、その周辺の土地の資産価値もあがる可能性が出てきます。

そんな中でも資産価値の高い土地はどのような土地か、以下の4つの要素でみてみます。



1. 道路付け
一般的には南側に道路がある方が、日当たりのよい住まいになります。道路を挟んで建物がありますので、北側よりも南側に道路がある方が、日当たりの条件はよくなります。また道路の幅員も重要です。前面の道路が4m未満の場合には建築することは原則できませんので、注意が必要です。

2. 方位
東南の角地の人気が高いです。午前中からお昼過ぎまで一日中日当たりを確保できる条件がそろっています。通風が必要な夏場も南側が開けているので、風通しを期待できます。

3. 面積
手ごろな広さがベターです。将来的に売却を考えたときにあまり広すぎると買い手が付きにくいこともあります。エリアによっては駐車場をセットで考えなくてはいけない場合もありますので、そういった点も考慮しておきましょう。

4. 形状
整形地がベターです。東西に長い土地か、南北かどちらの方が価値が高いでしょうか。建築士の視点から考えると、東西に長い場合には南面がそれだけ広くとることができ、明るい部屋を作りやすいです。しかし、高さ制限がある場合には真北を基準に制限を受けるので、広い面積を十分に使えない場合もあります。 南北の場合にはその高さ制限は受けにくいですが、南に面する部屋は限られてしまいます。

建てる土地の法令上の制限と、建てたい建物の要望によって適した土地も変わってきます。土地を探す場合には、上記のような土地の条件なども吟味して検討することで、将来的に資産価値を維持することにも繋がります。  

今回災害に強い家を建てるには「立地条件」を考えることが重要だとお伝えしました。しかしながら、良い土地は待っていても出てきません。土地を探す場合にやるべきことは希望の優先順位をつけることです。まずは「広さ」、「利便性」、「環境」、「エリア」などひとそれぞれニーズが異なりますので、これらをご家族内で相談して優先順位をつけます。それから複数の住宅メーカーに相談してみましょう。各住宅メーカーには、ご希望に沿った土地情報が多数あるため、家づくりとあわせて相談することが可能です。 住宅メーカーに相談することで、希望の間取りが成り立つ土地なのかどうか、そしてその土地が災害に強い土地かということも検討した上で、安心して家づくりを進めていただけるかと思います。ぜひ、住宅メーカーが集まる住宅展示場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。


作成日:2021年2月19日


監修・情報提供:金内 浩之 (一級建築士)
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