【2020年度 災害対策/レジリエンス コラム第9回】直ぐに持ち出せる!災害対策を考慮した収納の秘訣
2020.12.22
今回は、収納の観点から考える災害対策についてお伝えします。日本はご存知の通り地震をはじめ災害に対して準備が必要な地域です。ヘルメットや非常食などの防災グッズをあらかじめ備えているご家庭もあるかと思います。今回は建築士の視点から、そのような防災グッズを住まいに安全に収納するための秘訣をお伝えしたいと思います。
【1】災害時の防災グッズは「直ぐに持ち出せる」が重要
いつ災害が起きたとしても対応できるように、日頃より備えておくことが重要です。避難場所等へ避難する際に、防災グッズを直ぐに持ち出して避難できるようになっていますでしょうか?
<参考画像:玄関収納>
直ぐに持ち出せる収納場所として、玄関付近が一番適していると思います。しかしながら玄関収納にはスペースに限りがありますので、防災グッズだけしまうわけにはいきません。その場合には、シューズクロークのようなスペースがあると便利です。玄関土間の延長にちょっとした収納空間があるとひと目でわかりますし、日々のメンテナンスもしやすくなります。(参考画像-①)注意する点としては、あまりにも高い位置に収納して、脚立がないと取り出せないということがないようにしましょう。
シューズクロークが計画できない場合には、玄関までの廊下収納を計画しても同じような効果が期待できます。(参考画像-②)
また、周囲に置かれている家具等の状況にも配慮が必要です。その収納までの経路にタンスなどがあった場合に、地震等で倒れてしまってそこへたどり着けないということも考えられます。転倒防止策をしっかりとって、いざという時に備えましょう。扉に組み込まれたガラスにも注意が必要です。地震等の歪みでガラスが飛散して、素足で歩いて怪我をしてしまわないように、飛散防止のフィルム等で対策をするとより安心です。
【2】防災グッズを収納するポイント
では次に防災グッズをどこにしまったらよいかお伝えします。先ほど「いつでも取り出せる」ようにすることが重要とお伝えしました。例えば廊下収納を計画した場合にはどのような収納にしたらよいでしょうか?
廊下の壁面に収納を考えた時に効率の良い収納とするには、幅ではなく奥行きがポイントになります。防災グッズの入ったバッグ等を収納するには、奥行きが30cmから45 cmもあれば十分可能です。逆に押し入れの様な深い収納(90 cmぐらい)の場合には、奥に入り込みすぎて、いざという時に取り出せなくなります。
また、収納の使い勝手を考えた時に、腰から目線ぐらいまでの高さが一番使いやすい位置になります。防災グッズ専用の収納スペースであればいいのですが、日用品も一緒に収納する場合には、日頃使わない防災グッズの置き場に悩みます。日用品は、一番使いやすい腰から目線ぐらいの高さにしまい、それ以外の防災グッズは床付近や目線より高い位置にしまうようにして、すぐに取り出せるようにしておきましょう。その場合には、何点か注意が必要です。
<収納する位置によっての注意点>
・床付近の場合には湿気対策が必要です。
床付近に収納するものとしては、飲料水などの重量物をお勧めします。
ただし、湿気がたまらないように床にスノコなどを敷いて風通しに配慮します。湿気取りや調湿性のある床・壁材を使うのも効果的です。
・目線よりも高い位置の場合は、落下対策が必要です。
地震等で建物が揺れて、収納の扉が開いてしまい物が落下するケースが考えられます。扉そのものにも耐震ラッチと呼ばれる地震時に扉が開かないようにロックされるものもありますので、効果的に使うことで安全につながります。
また目線より高い位置にしまう場合は、取り出しやすさも考え収納ボックスなどを利用すると便利です。収納ボックスには、取っ手がついているものもあるので、引っ張り出すことが容易にできます。計画する際には、落下対策と合わせて取り出しやすさも重視して、収納グッズを活用しましょう。
これらの壁面収納は、災害対策だけでなく、収納計画を考える上でも大切なポイントです。また、玄関や廊下、リビングなど家族が集う場所にあると部屋が散らからず便利です。収納するものにもよりますが、30 cmから45 cm程度の奥行を意識して、壁面収納の面積が大きくなるように計画することをお勧めします。
【3】災害対策で考えるべき家づくりの計画
では最後に、災害を考えた場合の家づくりのポイントを簡単にお伝えします。
例えば、夜間に地震が起きたとします。家の電気が停電となってしまった場合、防災グッズをしまった収納スペースまでは安全にたどり着けるようになっているか災害時には重要です。簡単な方法としては、ベッド脇に停電時でも困らない懐中電灯を収納しておけば非常に安心です。
現在は、お部屋のインテリアになじむフットライト(足元灯)を階段や廊下に設置する場合も多く、非常時には役立ちます。また日常はフットライトとして、非常時には懐中電灯としても活用できる組み込み式の商品もあります。毎日のお掃除などコンセントとしても使用できますし、いざという時はバッテリーを内蔵していますので安心です。
また、水害の場合には、1階の床下、もしくは床上に水が入り込んでしまった場合に、せっかく防災用に準備したグッズは使えなくなることも考えられます。その対策として、1階だけでなく2階以上にも防災グッズを収納しておくと良いでしょう。特に河川に近かったり、以前水害に見舞われた場所では、2階以上に収納を計画しましょう。屋根裏や天井裏などでは、雨漏りの恐れもあるので、収納場所のメンテナンスをする意味でも、日々の生活において換気・通風を取ることを意識づけましょう。
今回は、災害対策での収納のポイントや役立つ設備についてお伝えしました。万が一の場合にも安全な生活を維持できる家づくりを意識して、効果的な収納計画や収納家具などについて、必要なスペースはどのくらいか、実物を住宅展示場のモデルハウス見学で確認したり、専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
監修・情報提供:金内 浩之 (一級建築士)
©2020 Next Eyes.co.Ltd
役立つマイホーム基礎知識はネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。
本記事に掲載しているテキスト及び画像の無断転載を禁じます。