【2020年度 災害対策/レジリエンス コラム第7回】地震に強い「安心」「安全」な家づくりの秘訣
2020.10.22
前回*の震災対策に引き続き、地震に強い家づくりについてお伝えします。日本のように地震が多い国では、家族や家財を守るためにも地震に強い家にすることが大切です。今回は地震に強い家づくりのポイントと、地震の後の停電などの自然災害に備えるために、何が必要なのかについてもご紹介します。
*第6回:家族と家財を守れる家コラムはこちら
【1】地震大国 日本の家には耐震性能を!
日本はちょうど4つの岩盤の境目に位置しており、その境目では地震が多く発生しています。
地震には、「海の地震」と「陸の地震」の2種類があります。「海の地震」はプレートが原因とされており、被害が広範囲になるほか、揺れの時間も長くなります。東日本大震災はこれによるものです。
「陸の地震」は陸のプレートの中で起きる地震で、直下型地震ともいいます。震源の真上に都市がある場合、大きな災害となります。阪神・淡路大震災はこれによるものです。 つまり活断層が多いところは地震も多く発生する可能性が高いともいえます。その活断層は数千年から数万年間隔で繰り返される断層運動(大地震)によって地表にあらわれる過去の地震痕跡であるとともに、今後の地震発生の原因にもなります。日本列島には多くの活断層があり、約2,000箇所が確認されています。
そのような日本で、安心で安全な家づくりに「耐震性能」は外せない条件といえます。耐震性のポイントは、地盤・基礎・構造にあるといわれており、まず建てる敷地の地盤調査を実施し、その地盤に合わせた基礎をつくり、さらに建物自体が地震に対抗できる構造を備えていることが重要です。今回は、その建物の構造で大切な耐震等級などにふれていきたいと思います。
【2】地震に強い家を建てる際の2つのポイント 耐震等級と構造計算
地震に強い家にするためには、高い耐震等級で構造計算がされていることがポイントです。「構造計算」とは、地震、風、積雪などの荷重に対して、建物がどのくらい耐えられるのかを算出することで、必要な柱や壁をどこに配置するのかなど明確になります。耐力壁などはただ多ければいいという事ではなく、バランスよく配置することで地震に強い家となります。
まず建物の構造を考える上で、基本的な3つの工法があります。
<建物構造の工法>
1. 耐震構造
2. 制震構造
3. 免震構造
1.柱や梁などの建物自体を頑丈にする「耐震構造」
柱と梁をガッチリと固め、地震等の外力が加わった際には、その力に負けず耐えるという考え方です。柱と柱の間を筋交いや面材などで補強した耐力壁で建物の揺れをおさえます。しかし、想定以上の力が加わったときは、その柱や梁が損傷し、壊れながら少しずつ崩れていく仕組みとなっています。
2. 建物自体が揺れながら力を吸収し、衝撃をおさえる「制震構造」
地震の揺れは建物に直接伝わりますが、建物の壁などに揺れを吸収する装置を組み込み、揺れを吸収することで、建物の損傷を防止する構造です。
3. 地面の揺れを建物本体に伝えない「免震構造」
建物と基礎の間にゴムのような装置を入れることで、建物に伝わる揺れを大幅に低減します。
上記の工法により、建築基準法で定める条件を満たすだけでは、度重なる地震によりダメージを受ける部位がでてしまう場合があります。そして地震でダメージを受けた建物は、将来にわたって高い耐震性を確保することはできなくなってしまいます。より強度を高くするために、構造計算をする際の基準数値を安全側に割増する、つまり「耐震等級」を高く設定する必要があります。「耐震等級」とは、地震に対する建物の強さを表す等級、具体的には筋交いや構造面材のような耐力壁の量の指針になります。耐力壁が増えればそれを支える柱や梁の強度も必然的に高くなるため、建物全体の強度が増します。建築基準法レベルを等級1として等級2、等級3と全部で3段階あります。
※建築基準法で定められた耐震性については、前回の記事をご覧ください。
<耐震等級について>
1.耐震等級1=建築基準法に定められている最低限の耐震性能。
震度6強~7の地震でも、即倒壊はしない。
2.耐震等級2=耐震等級1の強度×1.25。
震度6強~7の地震でも、一定の補修程度で住み続けられる。学校や避難所などの公共建築物に多く採用されている。
3.耐震等級3=耐震等級1の強度×1.5。
震度6強~7の地震でも、軽い補修程度で住み続けられる。消防署や警察署など災害復興の拠点となる防災施設に多く採用されている。
より大きな地震に倒壊しない耐震等級3を標準仕様とする住宅メーカーも年々増えてきています。
耐震等級3で家を設計した場合には、建物に必要な筋交いや耐震上必要な耐力壁が1.5倍必要になります。それだけ安全性が高くなるため地震に強い家づくりには欠かせないポイントといえます。しかし間取りに制限があることも覚えておきましょう。例えば、窓のような開口部や大きな空間などは耐震性に影響を与える恐れがあるため、設計しにくくなることもあります。
地震に備えて重要なのは、最高ランクの「耐震等級3」の性能で、「構造計算」も実施することです。耐震等級の認定を受けるために、許容応力度計算(※1)のような「構造計算」は義務化されておらず、2階建ての一般住宅では「構造計算」ではなく「壁量計算(※2)」で耐震等級3の認定を取得することができてしまいます。しかし度重なる地震に備えて、高い耐震等級での「構造計算」をしっかりと行うことでより安全な家づくりが実現します。耐震性に不安を覚える場合などは、ハウスメーカーに確認することをおすすめします。
※1:許容応力度計算とは、あらゆる建物の基礎や柱・梁・床・壁等の構造上、重要な部分に対して荷重や地震に対して十分に耐えられるかどうかを計算するものです。
※2:壁量計算は、基本的に木造の建物が対象で、建築基準法第46条などの規定により、間取りに対して耐力壁の量が十分か計算するものです。
【3】万一の地震に備えて役立つ設備について
いざ地震などの自然災害が発生した場合に起こりうることが停電です。仮に停電になってしまった場合には、まずは以下の2つのことを確認しましょう。
1. 停電の規模を調べる
2. 使用中の家電製品のコンセントを抜く
停電がその家だけなのか、ある一部屋だけなのかを確認します。その場合は、その該当箇所のブレーカーに原因があります。家の中だけでなく地域全体であれば外部に原因があると思われます。
次に家電製品のコンセントを抜きます。アイロンなど停電前の状態で放置した場合には、火災の危険性があります。そして、停電が続いた場合には冷蔵庫の機能も停止してしまいますので、食品を痛めないためにも保冷剤や氷を冷蔵室に移すことで、しばらくは冷蔵庫の温度を保つことが可能です。
このように停電になった場合には、冷蔵庫が使えない、照明がつかない、テレビが見れなかったり、スマホの充電ができないなど不便な生活となってしまいます。そのような停電時の不安な暮らしに備えて、太陽光発電などでエネルギーを作り出して、必要に応じて蓄電池に貯めておけるような「創エネ」の設備があると安心です。昼間の電気を夜間でも使用できるようにすることで、一定期間の停電をしのぐことができます。災害時こそ使用したい家電製品として、冷蔵庫、テレビ、照明器具、スマートフォンが代表的なものかと思います。それについては、搭載する太陽光発電量や蓄電池の容量にもよりますが、12時間程度は使用可能です。蓄電池の容量を大きくすれば使用できる電気量や時間も増えますが、暮らしに合わせた容量を選ぶことが重要です。
家族構成や1日の生活リズムによっても、使用する電気量は異なります。毎月の電気利用量から最適な容量を選ぶことが可能です。
すべて電気で管理されたオール電化住宅などに不安がある場合には、「エネファーム」というガスから発電+給湯+暖房できる設備もあります。ガスから取り出した水素と空気中の酸素を反応させて発電します。その発電時に出る熱エネルギーを利用して水をお湯に変えます。このお湯は給湯に使用するだけでなく、床暖房などの暖房にも活用が可能です。
これらの設備について、以前はサイズが大きかったものの、コンパクト化、効率化が進み、限られたスペースに建築するような、都市型住宅でも設置がしやすくなりました。設置場所やスペックは、専門家のアドバイスをもとに選ばれることをお勧めします。
今回は、地震対策になる家づくりのポイントや役立つ設備についてお伝えしました。地震に強い「安心」「安全」な家づくりのためにも、各住宅会社においては最新の耐震技術や設備も開発されており、我が家に必要な機能は何か、実物を住宅展示場で確認したり、専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
※本文は、2020年9月25日時点の情報に基づいて作成しております。
監修・情報提供:金内 浩之 (一級建築士)
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