【第52回】<特集号>ハウスメーカーと建てる家族が安心して長く暮らせる家 Vol.1 ~耐震の重要性と耐震基準~
2017.08.01
家を新築する時に国からの補助金等活用して建築できる場合があります。そもそもなぜ個人の住まいに国が補助金制度を設けているのか?それは、日本での家づくりにおいて重要な「耐震性」「省エネ性」が関係しています。特集として3回に分けて、それを紐解いていきましょう。まず、今月は耐震性の重要性と耐震基準の違いを中心に、お伝えいたします。
【1】大地震の来る可能性が30年で70%!
日本には数多く地震が発生します。熊本の地震は未だ記憶に新しく、国土交通省の発表によりますと、「首都圏で30年以内に70%の確率で大地震が来る」と予想されています。(南関東エリアにおいて、予想されるマグニチュードの規模はM6.7~7.2)
日本は地震大国で、海溝型地震の場合、その地震の発生の周期は概ね同じ周期で発生すると考えられています。海溝型地震とは、それぞれのプレートが少しずつズレていき、ある反動でそのズレが反発し元に戻ります。そのときの振動が地震として地表面に伝わってきます。太平洋にはそのプレートの境目がいくつか存在するため、日本では地震が発生しやすくなっています。関東地方において、直近に発生した地震の周期を見てみましょう。
上記の表のように、関東地方においても元禄関東地震(1703年)のあと、大正関東地震(関東大震災1923年)が発生しています。他のエリアとの発生周期などを考慮し、次に来る大地震の発生確率を予測しています。次に来る大地震に備えてどのように準備しておくべきなのでしょうか?
【2】耐震基準は建築時期によって変化している
住宅建築で重視される項目の一つとして「耐震性」が挙げられます。各ハウスメーカーでは耐震性を重視した家づくりを行っています。この「耐震性」について、建築基準法という法律によってその基準が定められています。しかし、その基準も年代によって法改正がなされ、内容が変化しています。ではその基準の違いについて見てみましょう。
建築基準法では上記の表のように構造の基準を設けています。時代ごとにその基準も変わっており、現在建物は主に3つの基準で分けられます。まず、①1981年6月以前の「旧耐震基準」、②それ以降で2000年6月までの「新耐震基準」、③それ以降の「現行耐震基準」です。切り替わったタイミングには大きな地震がきっかけになっています。例えば、1978年の宮城県沖地震や、1995年の阪神・淡路大震災が法改正のきっかけになっています。その後の東日本大震災、熊本地震についても、建築業界に様々な課題を投げかけています。日本は地震が多く、大きな地震が起こるたびに耐震の基準は変わっているのです。
【3】熊本地震でわかった耐震基準の問題点
昨年、発生した熊本地震において、数多くの被害が発生したのはいまだ記憶に新しいかと思いますが、この地震で倒壊してしまった建物を国土交通省や各種研究機関により調査がなされたところ、「旧耐震基準」の家は半数以上、「新耐震基準」の家は約20%倒壊、現行耐震基準」の家も全体の約5%倒壊したことが分かりました。
新しい建築基準になるほど倒壊している割合は確実に低くなることはわかりますが、新耐震基準以降の建物でも、残念ながら倒壊しています。それはなぜでしょうか?
「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント
調査機関の一つの諮問機関である日本建築学会では、以下のような問題点を指摘しています。
2.金物がしっかりと接合されていなかった為、骨組みが緩んでしまった。
3.余震の後に本震があり、短期間に大きな揺れが続いた
倒壊を免れた家は、地盤調査などしっかりと検討を行い、骨組みに余力があり、施工が確実に行われている建物だということがわかりました。熊本地震のようにたて続けに大地震が続いた場合には、余力がいかに残されているかがキーポイントです。建物を設計する場合に、最優先することは人命です。大きな地震が発生した場合には、余力があれば骨組みが損傷しながらもその揺れを吸収し倒壊を免れます。一度損傷した建物は当初の耐震性は残っていません。大地震が発生したときにその後の生活を避難所で過ごすのか、マイホームに残れるのかについては建物の骨組みの余力次第です。
これから住まいについて考えられている方も建物構造において、耐震に関する新しい技術を各ハウスメーカーが開発し、普及させているものがありますので、ぜひ展示場に足を運んで確認し、我が家に最適な工法はどれか相談してみましょう。
来月のコラムでは、「2020年までに「省エネ基準」は義務化になる?!」についてご紹介します。
監修・情報提供:金内浩之(一級建築士)
国土交通省大臣登録 耐震診断資格者(木造住宅診断士)
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