【第32回】消費税8%で購入できるのはあと1年!? 今が建てドキの理由 第二弾
2015.12.01
前回は「マイホームは今が建て時」の理由として消費税増税スケジュール、住宅ローン金利の動向、フラット35Sの金利引き下げ、の3つについて解説しました。今回は「今が建て時」の別の理由を解説します。住宅ローン減税、すまい給付金、投資型減税の3つを取り上げます。
【1】最大500万円の住宅ローン減税。増税後はどうなる?
住宅ローンを組んで住宅を購入すると住宅ローン減税が使えます。住宅ローンの毎年の年末残高の1%分が、10年間所得税から減税可能で、所得税から減税しきれない分は住民税からも減税できる、というものです。下表のように最大減税額は1年あたり50万円、10年間で500万円(長期優良住宅等の場合)となっています。
住宅ローン減税の最大減税額は消費税率が5%から8%になった際に20万円(10年間で最大200万円)増えました。そのため収入が高い人の中には消費税が8%に上がるまで待ってから住宅を建てると、消費税負担の増大分より住宅ローン減税で得する金額が大きくなるという人もいたのです。しかし8%から10%への増税時には住宅ローン減税に特に変化はありません。住宅ローン減税と消費税という観点で考えると8%の今のうちに建てた方がお得だ、と言えます。
【2】すまい給付金は10%の方がお得?
消費税率が5%から8%になった時に作られたのが「すまい給付金」という制度。所得に上限がありますが住宅購入者は現金が受け取れるというものです。下表のように消費税率8%の今は、年収510万円以下の人に最大30万円の現金が給付されます(厳密には都道府県民税の「所得割額」で決まるので、この510万円というのは目安の数字です)。夫婦などで住宅を共有する場合は、下表の給付基礎額にそれぞれの持分割合をかけた金額が受け取れます。なお、すまい給付金は住宅購入者が受け取るのではなく、ハウスメーカー等が代理して受け取りそれを住宅代金に組み込むこともできます。
すまい給付金は消費税率が8%から10%になると上表のように受け取れる対象が広がり、受け取れる金額も大きくなります。しかしそれだけで消費税負担をカバーすることはできない人も多いです。
例えば年収550万円のAさんが工事価格2,500万円の住宅を建てる場合を考えます。消費税率が8%のうちはすまい給付金を受け取ることがはできませんが、10%になってから住宅を建てると30万円の給付が受けられることになります。一方、消費税が8%から10%になると、負担は50万円増えることになります。結局Aさんの場合、消費税の負担増をすまい給付金だけではカバーしきれていないことになります。
すまい給付金と消費税という観点で考えても結局、Aさんのように8%の今のうちに建てた方がお得な人が多い、と言えます。
【3】住宅ローンを組まなくても受けられる減税がある!
住宅ローンを利用しない場合に使える減税として認定住宅新築等特別税額控除があります。通称「投資型減税」と呼ばれることが多いので以下「投資型減税」と呼びます。これは、長期優良住宅や低炭素住宅を建てる場合に1年間だけですが、最大65万円、所得税から減税することができるという制度です。減税額は以下の計算式で決まります。「標準的な掛かり増し費用」というのは一般の住宅から長期優良住宅や低炭素住宅にグレードアップさせるために必要な標準的な費用、とお考えください。
この投資型減税も5%から8%への消費増税時に15万円分減税額が増えたのです。しかし8%から10%への増税時には特に有利になる要素はありません。投資型減税と消費税という観点で考えても8%の今のうちに建てた方がお得、と言えます。
※なお住宅ローン利用者もこの制度を利用できますが、住宅ローン減税かこの制度のどちらか1つしか選択できません。通常は住宅ローン減税の方が減税額は大きくなるので、この投資型減税は利用せず住宅ローン減税を利用します。
以上、住宅購入を支援する制度の中で、住宅ローン減税、すまい給付金、投資型減税の3つについて解説してきました。住宅ローン減税と投資型減税については消費税率が8%から10%になっても減税額が大きくなることはありません。すまい給付金は消費税率が10%に上がると給付金の対象となる人は増え、給付金の額も大きくなりますが、そのメリットより消費税負担が増えるデメリットの方が大きくなってしまう人が多いと考えられます。今回見た3つの観点からも消費税率が8%の今のうちに建てた方が得だ、と言うことができます。今が建て時、と言われる理由、次回も解説しますのでお楽しみに。
監修・情報提供:株式会社FPアルトゥル 代表取締役
ファイナンシャルプランナーCFP® 井上光章
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