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【第144回】断熱等級とは?等級の違いや高断熱の住宅を建てるポイントを解説

夏には猛暑が続き、冬には冷え込む日本で快適に過ごせる住宅をつくるには、断熱性を高めることが大切です。住宅には「断熱等級」という基準がありますが、断熱等級とは何を示すものなのか疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、住宅の断熱等級と、断熱性の高い家づくりが実際の暮らしにどのような影響を及ぼすのかを解説します。断熱等級を理解したうえで過ごしやすい住宅を建てたい方は、ぜひ参考にしてください。


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断熱等級とは

住宅の断熱等級(断熱等性能等級)とは、熱の伝わりにくさなどの断熱性能を表す指標です。「等級1」から「等級7」まで7つのランクがあり、数字が大きいほど断熱性が高く、エネルギー効率に優れていることを示します。7つの等級のうち、「等級5」は2022年4月、「等級6」と「等級7」は2022年10月に相次いで新設されました。

等級の違い

注文住宅を建てる際に、「断熱等級はいくつあればよいのだろうか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。2025年4月以降に新築住宅を建築する場合の断熱性能は、「等級4以上」が義務化されます。2022年に等級5が新設されるまでは最高基準だった等級4が、2025年からは最低基準になるというわけです。ここでは、等級による違いをそれぞれ具体的に解説します。

断熱等級4

断熱等級4は1999年に省エネルギー基準が改正され、いわゆる「次世代省エネ基準」が策定されたことで定められた等級です。「窓や玄関などの開口部については、複層ガラスを使用しなければならない」など、住宅の断熱性能を高めることを目的とした規定が追加されました。

断熱等級5

断熱等級5は2022年4月に新設された等級で、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の断熱性能に相当することを示しています。ZEHとは、エネルギーの収支をゼロにする住宅のことで、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指し、普及が進められています。なお、2030年以降に建築する新築住宅の断熱性能は、等級5が最低基準となる予定です。

断熱等級6

断熱等級6は2022年10月に新設された等級で、等級4と比較したときに冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を、おおむね30%削減可能な断熱性能があることを示しています。耐熱性・耐震性・省エネ性などを兼ね備えたいわゆる高性能住宅は、断熱等級6以上を満たしていることが少なくありません。2030年に断熱等級5が最低基準となることを踏まえると、先んじて断熱等級6以上の住宅を建てることには、大きな価値があるといえるでしょう。

断熱等級7

断熱等級7は2022年10月に新設された等級で、冷暖房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね40%削減できる水準を示しています。断熱等級7の住宅は、気温がマイナスになる寒冷地であっても室温が15℃以下になりにくいといわれ、「日本の住宅は寒い」という昔からのイメージをくつがえす性能を実現しています。

断熱等級の基準


住宅の断熱等級は、「等級5にするには壁にこの素材を使えばよい」というように、単純な条件で決まるものではありません。ここでは、断熱等級がどういった基準で決まるのかを解説します。

UA値・ηAC値

断熱等級を決める要素で重要なのが、UA値(ユーエー値)とηAC値(イータエーシー値)の2つの値です。

  • UA値:住宅の屋根や壁などを通じて、室内と外気の間でどのくらい熱が伝わりやすいかを示す
  • ηAC値:冷房が必要な時期に、日射熱がどのくらい室内へ入りやすいかを示す

2つの値が小さいほど、断熱性能や遮蔽性能が高いとされます。

地域区分

断熱等級における地域区分とは、外気温や日射量をもとに、日本を8つの地域に分けたものです。南北に長い日本では、地域によって気温や気候が大きく異なるため、8つの区分ごとにクリアすべきUA値とηAC値の基準値が定められています。

例えば、北海道などの寒冷地に多い「区分1」での断熱等級6は、「UA値は0.28以下、ηAC値は基準なし」です。一方で東京23区などが該当する「区分6」での断熱等級6は「UA値は0.46以下、ηAC値は2.8以下」と、大きな違いがあります。

断熱等級の高い住宅のメリット・デメリット

断熱等級の高い住宅にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもある点に注意が必要です。断熱等級が高い住宅を建てることに、どのようなメリットとデメリットがあるのかを以下で紹介します。

メリット

断熱等級の高い住宅を建てるメリットは、主に以下の4つです。順番に解説します。

快適な室内環境を保てる

断熱等級が高い住宅ほど、屋内と屋外での熱の出入りが少なくなり、「夏は涼しく冬は暖かい」という理想的な室内環境を保てます。室内の冷気や暖気が外に逃げにくくなるため、エアコンの設定温度を極端に高くしたり低くしたりする必要もありません。一年を通じて快適な室内環境をキープすることは、暮らしの満足度やQOLの向上にも大きく貢献します。

健康改善につながる

断熱性を上げることは、家族の健康改善にもつながります。例えば冬に寒い部屋で過ごせば体温が奪われて体が冷え、さまざまな不調を引き起こしかねません。家の中全体が暖かくなれば寒さが原因となる健康被害を防げるうえ、温度差が引き起こすヒートショックの対策にも効果的です。また、室内環境が向上することで、アレルギー症状などが改善する傾向があるといわれています。

節約につながる

断熱性が高い住宅は外気温の影響を受けにくく、一定の室温をキープしやすくなるため、光熱費の節約にもつながります。断熱性の高い家づくりには初期コストがかかるものの、長期間にわたって光熱費を抑えることが可能です。電気やガスを必要最低限しか使わない生活は地球環境にもやさしく、身近なエコ活動ともいえます。

補助金制度を活用できる可能性がある

都道府県や市区町村によっては、断熱等級の高い住宅を建てたときに活用できる補助金制度が設けられています。ただし、利用条件や申請期限、予算上限などの細かいルールが設定されているケースが多いため、すべての工事で利用できるというわけではありません。詳細は、あらかじめ自治体のWebサイトや窓口などで確認しておきましょう。

デメリット

断熱等級の高い住宅を建てるときに気をつけたいデメリットは、主に以下の2つです。後から困らないために、確認しておきましょう。

空気がこもりやすい

気密性が高く、空気の出入りが少ない高断熱住宅は、換気が不十分だと空気がこもりやすくなります。ゴミやホコリを含む空気が長く室内に滞留すると、シックハウス症候群やアレルギー症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。住宅の高性能化を受け、2003年にはすべての住宅に24時間換気システムの設置が義務付けられました。ただし、換気性能を維持するには定期的なメンテナンスが必須であり、性能が落ちた状態で使い続けると、さまざまなリスクが発生します。

初期コストがかかる

断熱性の高い住宅を建てるには、設計段階から綿密かつ高精度な作業が求められます。また、断熱性の高い建材を使う必要があるため、材料コストも膨らみがちです。長期間にわたって光熱費を削減できるとはいえ、それなりの初期コストがかかることは避けられません。

住宅を建てる際に選ぶべき断熱等級とは

「結局のところ、断熱等級はいくつにすればよいのだろうか」と悩む方も多いのではないでしょうか。これから注文住宅を建てるのであれば、断熱等級6を選択するのがおすすめです。2025年には断熱等級4が最低基準となるうえ、2030年にはさらに省エネ基準が引き上げられ、断熱等級5が最低基準となることが予定されているためです。

建てたマイホームに何十年も住むことを考えれば、断熱等級5は最低基準と考え、できれば断熱等級6を目指すとよいでしょう。

断熱等級の高い住宅を建てる際のポイント

マイホームは、人生で最も大きな買い物といっても過言ではありません。建ててから「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、事前にしっかりと情報を集めておきましょう。ここでは、断熱等級の高い住宅を建てる際に、押さえておきたいポイントを紹介します。

適切な通風・換気計画を立てる

断熱等級が高い住宅は空気がこもりやすく、室内や屋根裏などの熱や湿気も逃げづらくなることから、カビや結露が発生しやすくなります。カビや結露は、呼吸器疾患やアレルギーなどの健康被害をもたらすこともあるため、十分に対策を練らなくてはなりません。通風や換気の重要性を理解し、自然な空気の流れが発生するような設計をすることが重要です。

窓の影響を考える

住宅で最も熱の出入りが多い場所は窓です。断熱性を高めるには、窓の数やサイズ、配置、ガラスやサッシの種類などを考える必要があります。窓を適切に設計することで、コストを抑えつつ断熱性能を上げることが可能です。日差しをどのように取り込むかも考慮したうえで、窓から出入りする熱を最小限にとどめるよう工夫をしましょう。

実績豊富な建築会社に依頼する

高断熱の住宅をつくるには、高い施工技術が求められます。家を建てるエリアの環境に合わせた設計が必要なのはもちろんのこと、隙間なく仕上げて気密性を高めるには熟練の技術が欠かせません。理想どおりの快適なマイホームを手に入れるには、高気密・高断熱住宅の施工実績が豊富な建築会社に依頼すると安心です。

まとめ

断熱等級の高い住宅で長く快適な暮らしを

高断熱な住宅は室内環境が外気温に影響されにくく、一年を通して暮らしがより快適になります。なおかつ室内の温度調整に使うエネルギーを削減できるため、光熱費を抑えられるうえに地球環境への負荷も減らすことができます。家づくりを計画する際は、断熱等級6を目指すのがおすすめです。

断熱等級の高い家を建てるには「家サイト」を活用し、高気密・高断熱住宅の施工実績が豊富な住宅会社を探してみてください。住宅展示場では、断熱等級の高い家づくりに関する相談も可能です。家族が快適に過ごせるマイホームづくりに、ぜひ「家サイト」をお役立てください。

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監修・情報提供:福本 剛志 (設計事務所 アクア株式会社/二級建築士)
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本記事はTrail(株)が記事提供しています。
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