【第142回】未来を見据えた暮らし!ZEH(ゼッチ)の魅力とは?NEW
2024.11.18
2025年4月に予定される、新築住宅・小規模住宅を対象とした「省エネ基準適合」の義務化。その流れを受け、「ZEH(ゼッチ)」に注目が集まっています。しかし、「ZEH=省エネ性能が高い家」といった大まかなイメージはあっても、具体的にどのような住宅なのか理解している方は少ないかもしれません。この記事では、ZEHの意味や定義、ZEHの種類、求められる要素、ZEHのメリット・デメリットや注意点などをご紹介します。
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ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは?
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、簡単に言えばエネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことを指します。具体的には、住宅で消費するエネルギー以上のエネルギーを生み出すことで、実質的なエネルギー使用をゼロにすることを目指しています。この取り組みの目的は、地球温暖化対策の一環として、住宅のエネルギー消費量を削減し、持続可能な住環境を実現することにあります。ZEHは、高断熱な外皮、効率的な省エネルギー設備、そして太陽光発電による創エネ技術を組み合わせることで、その目的を達成しようとしています。
ZEH(ゼッチ)と呼ばれる理由
ZEHは、英語の頭文字を取った略称ですが、日本では「ゼッチ」と呼ばれることが一般的です。これは英語の発音ではなく、親しみやすい響きを持たせるために日本語読みをしたものです。「ゼッチ」という呼び名は、日常生活の中で馴染みやすく、普及を促進するためにも役立っています。日本のエネルギー自給率が低いこともあり、ZEHの理念が広く受け入れられ、様々な施策によってその導入が推進されています。このように、「ゼッチ」がもたらす未来の暮らしが注目される理由には、こうした国全体のエネルギー政策や持続可能な社会の実現に向けた期待が背景にあります。
ZEH(ゼッチ)の種類
ZEHには、エネルギー消費量の削減割合などに応じて複数の種類があります。戸建て住宅に使われる「ZEH」、集合住宅に使われる「ZEH-M」が基本になりますが、ここでは戸建て住宅に絞って紹介します。戸建て住宅で用意されているZEHの種類は、「ZEH(ゼッチ)」のほか、「ZEH +(ゼッチ プラス)」「Nearly ZEH(ニアリー ゼッチ)」「Nearly ZEH +(ニアリー ゼッチ プラス)」「ZEH Oriented(ゼッチ オリエンテッド)」の4つがあります。
ZEHの種類 | 要件 | |
一次エネルギーの消費量の削減率 | その他 | |
ZEH |
|
|
ZEH + |
|
外皮性能のさらなる強化など一定の条件をクリアしている |
Nearly ZEH |
|
寒冷地や低日射地域など、創エネが十分にできない地域が対象 |
Nearly ZEH + |
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寒冷地や低日射地域など、創エネが十分にできない地域が対象・外皮性能のさらなる強化など一定の条件をクリアしている |
ZEH Oriented |
|
都市部など土地が狭く創エネが十分にできない地域が対象 |
ZEH(ゼッチ)の特徴とメリット
高い環境性能を誇るZEHは、多くのメリットがあります。ここでは代表的な特徴とメリットをご紹介します。
ZEH(ゼッチ)の特徴
ZEHの大きな特徴の一つに、高い断熱性能が挙げられます。ZEH(ゼッチ)とは、エネルギー収支がゼロ以下になるように設計された住宅であり、断熱性能はその基盤となっています。具体的には、UA値0.4㎡K/W~0.6㎡K/W相当以下の断熱性能を持つ窓や外壁材を使用し、外気の温度変化を室内に伝えにくくしています。これにより、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住環境を維持することが可能となり、省エネ効果も得られます。この省エネ効果は、家庭の光熱費削減に直結するとともに、地球環境にも優しい選択となります。
光熱費の削減につながる
ZEHは省エネ基準以上にエネルギー消費を抑えられるため、光熱費の削減につながります。省エネ基準を満たす住宅とZEH、さらに太陽光パネル付き住宅とで年間光熱費目安を比較した数値をご覧ください。
北海道等(2地域) | 東京等(6地域) | |
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今の省エネ住宅 (省エネ基準) |
346,000円 | 239,000円 |
ZEH水準の省エネ住宅 | 250,000円 | 193,000円 |
太陽光パネル付きの省エネ住宅 | 160,000円 | 153,000円 |
※令和4年11月時点の情報
出典)国土交通省 「家選びの基準変わります」
ヒートショックの軽減につながる
ZEHは断熱性が高く、冬場でも室内が均等に暖かくなります。室内でも温度の下がりやすい浴室やトイレなども暖かくなることで、部屋ごとの温度差が小さくなり、急激な温度差が引き起こすヒートショックの予防効果も期待できます。特にお年寄りがいる家庭にとっては大きなメリットとなります。
災害時に備えて電力を蓄えておける
地震などの災害時、電気などのインフラ復旧には相当な時間を要します。しかし、ZEHに蓄電池を設置しておけば、自家発電した電力を蓄えておけるため、いざというときに非常電力として活用できます。
ZEH(ゼッチ)のデメリットと注意点
多くのメリットが期待できるZEHですが、建築するにあたっては次のようなデメリットも認識しておく必要があります。
初期費用が高額になる可能性がある
ZEHの大きなデメリットの一つとして、初期費用の高さが挙げられます。エネルギー収支をゼロ以下にすることを目指した住宅であるため、性能を維持するために必要な高断熱材や高効率な省エネルギー設備、さらには太陽光発電システムの導入が必須となるためです。したがって、ZEHの導入を考えている方は、長期的な光熱費の削減効果や補助金制度を活用して、初期投資を回収できるかを慎重に検討することが重要でしょう。
天候によって発電量が左右される
ZEHでは太陽光発電システムを導入することが基本となります。太陽光発電は日照時間によって発電量が変わるため、雨の日が続けば当然発電量は下がってしまいます。夏場は十分な発電量を確保できますが、日照時間が短くなる冬場は自家発電だけでまかなうのが難しいケースも多いでしょう。そもそも年間を通して日照時間が短いエリアや、降雪量が多く冬の間はほとんど発電できないエリアなどでは、発電量が少なくなる点にも注意が必要です。
デザインや間取りに制限が出る可能性がある
ZEHでは、一般住宅よりも多くの設備を設置することになります。そのため、機器置き場を確保する都合上、間取りやデザインが制限される可能性もあります。どうしても叶えたい間取りや内外装デザインがある場合、設計時点で希望を伝えておくようにしましょう。特に屋根の角度やデザインは、太陽光パネルを設置する関係で制限される可能性が高くなります。詳しくは住宅会社の担当者に確認すると良いでしょう。
技術の進化による変動リスク
覚えておきたい注意点として、技術の進化による変動リスクがあります。ZEHの技術は急速に進化しており、数年先には現在の設備や材料が古くなり、より効率的なものが開発される可能性があります。このような技術の進化は、住宅の価値やエネルギー効率に影響を及ぼす可能性があるため、最新技術や市場動向を常に把握し、設備のアップグレードやメンテナンスが必要になる場合もあります。ZEHを選択する際には、どの程度将来の技術革新を見据えた設計や施工が行われるかを確認することが大切です。
ZEH(ゼッチ)の補助金と優遇制度
ZEHにすることで、給付金や税金の軽減措置を受けられる制度があります。一般の住宅に比べ、省エネ性能・断熱性能が高いZEHはより多くの優遇措置を受けられます。
補助金制度の内容と条件
ZEHを導入する際には、国や地方自治体から補助金が受けられる制度があります。この補助金制度は、ZEHの定義に基づいた住宅を新築または改修することが条件となります。対象となるのは、高断熱外皮や太陽光発電設備の設置、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の導入などを行い、一定の省エネ性能を達成した住宅です。こうした補助金は、初期投資を軽減し、ZEHの普及を促進する目的があります。ただし、申請手続きが必要であり、予算の範囲内での支給となるため、早めの対応が重要です。
令和6年度戸建住宅ZEH化等支援事業
年間の一次エネルギー消費量が正味でゼロとなることを目指した住宅(ZEH)、又はZEHより省エネを更に深堀りするとともに、設備のより効果的な運用等により太陽光発電等の自家消費拡大を目指したZEH(ZEH+)となる戸建住宅を新たに建築する、又は新築建売住宅を購入する事業が対象です。詳しくは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業」のWEBサイトや住宅会社の担当者に確認してみましょう。
子育てエコホーム支援事業
ZEH補助金以外に注目されている事業が「子育てエコホーム支援事業」となります。子育て世帯・若者夫婦世帯にとって注目すべき事業です。
エネルギー価格などの物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能(ZEHレベル)を有する新築住宅の取得に対して支援することにより、子育て世帯・若者夫婦世帯等による省エネ投資の下支えを行い、2050年のカーボンニュートラルの実現を図ります。
住宅ローン控除の優遇措置
ZEHには、住宅ローン控除においても優遇措置が設けられています。通常よりも控除額が増え、年間の所得税から差し引く額が拡大されることで、住宅購入の負担が軽減されます。この優遇措置は、ZEHの高い省エネ性能と環境配慮によるものであり、持続可能な住まいの普及を推進するための政策の一環です。具体的な控除額や条件は年度や地域によって異なる場合があるため、最新の情報を各種関連機関で確認することが大切です。
まとめ
ZEH(ゼッチ)住宅で快適な毎日を
ZEHとは、エネルギー効率の高い住宅として注目され、今や新しい生活基準となりつつあります。地球温暖化やエネルギーの持続可能な利用が求められる現代社会において、ZEHは一つの標準となる可能性があります。これは、省エネ設備や高い断熱性能、そして創エネ技術の活用により、家庭のエネルギー消費を最小限に抑えることを目指した住宅だからです。日本においては、2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのステップとして、ZEH住宅の普及が不可欠とされています。これにより、エネルギー自給率の向上や持続可能な社会の実現に大きく貢献することが期待されています。
ただし、ZEHにしたからといって必ずしも快適な住まいになるとは限りません。予算や将来のライフスタイルを考慮して条件を整理したうえで、自分たちの希望をなるべく採り入れたZEHを実現しましょう。
家サイトでは、お客様のライフスタイルやご要望に合わせた住宅の提案を行っています。ぜひお近くの展示場にお越しいただき、ZEHについて住宅会社の担当者に詳しく聞いてみませんか?
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監修・情報提供:福本 剛志 (設計事務所 アクア株式会社/二級建築士)
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本記事はTrail(株)が記事提供しています。
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