【第129回】【2024年4月版】マイナス金利解除で住宅ローンはどうなる?金利の影響と住宅購入のポイント
2024.04.30
日銀は2024年3月19日、金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を発表しました。これにより、2016年1月以来、約8年ぶりに日本の政策金利がマイナス金利から実質的なゼロ金利政策へと移行したことになります。
この決定に、久々の金利復活に対する世間の注目が集まっています。
では、金融政策の変更により、住宅ローン金利にはどのような影響がでてくるのでしょうか。
結論から言うと、マイナス金利政策が解除された直後に、住宅ローン金利が大幅に上昇する可能性は低いといえるでしょう。
しかし、将来的な金利上昇の可能性を踏まえた返済計画を立てることは大切です。
本記事では、マイナス金利政策が解除された背景や住宅ローンへの影響などを解説します。
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そもそもマイナス金利政策とは?
マイナス金利政策とは、日銀が民間の金融機関から預かるお金の当座預金口座の一部をマイナスにする政策のことです。
2016年から日銀が金融政策の柱の1つとして開始した、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」でマイナス金利政策が導入されたあとは、金融機関は日銀にある当座預金の残高のうち、一定額を超えた部分に対する金利が−0.1%となりました。
金融機関は日銀に余分なお金を預けると手数料を支払う必要があるため、個人や企業に対して貸し出すことを重視するようになります。マイナス金利政策の開始後は、金融機関の金利引き下げ競争が激しくなり、住宅ローン金利は歴史的ともいえる低水準で推移してきました。
なぜマイナス金利が解除されたのか
日銀はなぜ、このタイミングでマイナス金利政策を解除したのでしょうか。マイナス金利政策が解除されたのは、日銀が目標としている2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況になったと判断されたためです。近年の日本では、物価上昇率が2%を超える状況が続いていましたが、この物価上昇は原材料価格などの高騰が原因である「コストプッシュ型」であり、賃金の上昇をともなっていなかったために、物価安定の目標が達成されたとはいえない状況でした。
最近では、人手不足を解消して優秀な人材を確保するために、企業では賃金を上げる動きがみられます。企業の収益は改善を続けている一方で、労働需給は引き締まっており人手不足が生じやすい状況となっているためです。
参考)2023年10月版 - 住宅ローンの今後はどうなる?金利の動向と今後の見通しを解説!
マイナス金利政策の解除が住宅ローン金利に及ぼす影響は?
日銀の植田総裁は、記者会見で「異次元の金融緩和政策はその役割を果たした」「今後は短期金利を主たる政策手段とする通常の金融政策となる」と発言しました。このため、今回の政策変更により、異次元の金融緩和が始まる前の状態に戻ったと解釈するのが妥当といえるでしょう。では、マイナス金利が解除されると、どのような影響が生じる可能性があるのでしょうか。
変動金利の返済負担がすぐに上がる可能性は低い
多くの金融機関では、「短期プライムレート+ 0.1%」を変動金利型住宅ローンの基準金利としていますが、4月17日に住信SBIネット銀行が短期プライムレートを引き上げると発表しました。
これは現在、住宅ローン(変動金利)を返済中の金利が今後上がるということであり、毎月の返済額が増加することに繋がります。
しかし、銀行が短期プライムレートを引き上げた場合、多くの銀行はそれに連動して住宅ローン変動金利の基準金利を引き上げることになりますが、現在返済している人にはすぐに適用されるわけではありません。
「基準金利が改定される」のは、4月1日と10月1日の年2回だけとなり、その際に短期プライムレートが上がったままであれば、基準金利が改定されます。さらに、借入金利が本当に引き上げられる「借入金利の改定日」は3カ月後となります。そのため、2024年5月に基準金利が引き上げられても、実際の金利が上昇するのは、2025年の1月となります。
激変緩和措置で、返済額が上昇するのはもっと先となります。
変動金利の新規借入の金利は上昇する可能性がある
マイナス金利政策の解除にともない、優遇幅を縮小する金融機関が出てくる可能性があります。優遇幅が縮小されると、変動金利型の住宅ローンを新規で借り入れたときの返済負担は増えてしまうでしょう。
例えば、5000万円を返済期間35年・ボーナス返済なし、変動金利年0.4%で借り入れた場合の毎月返済額は127,595円です。金利が年0.5%上がるだけで、毎月返済額は138,825円となり、返済負担が月11,230円も重くなります。
借入後の返済負担を減らしたいのであれば、優遇幅が大きいうちに住宅ローンを借り入れておくのも1つの方法となります。しかし、マイナス金利の解除にともない、住宅ローンの優遇幅が縮小されるかどうかは定かではありません。むしろ、すでに新規借入の金利の引き下げを発表する金融機関もありますので、調べてみると良いでしょう。
固定金利への影響はまだ不透明
日銀がイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃を発表したあとも、固定金利型住宅ローンの指標である10年物国債の利回りはさほど上昇していません。これは、事前に日銀の政策変更についての観測報道が相次ぎ、市場ではすでに織り込まれていたことが理由と考えられます。長期国債の買い入れは今後も継続され、長期金利が急激に上昇するときは、買入額の増額や指値オペなどが実施されます。しかし、イールドカーブ・コントロールが撤廃されたあとは、市場の需要と供給に応じて金利が変動しやすくなるかもしれません。一方で、10年国債の利回りに上昇圧力がかかる主な要因となっていた日米の金利差は、今後縮小する可能性があります。米国のFRB(連邦準備制度理事会)は、3月21日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を5.25〜5.50%に据え置くことを決定しました。今後、米国のインフレが鈍化して利下げに転じれば、日米の金利差が縮まることで、10年国債の利回りが下がる可能性があります。とはいえ、10年国債は金融商品であり、投資家の将来予測や心理状況に応じて利回りは変動するため、固定金利の先行きを予測するのは困難といえます。
まとめ
2024年3月、日銀はマイナス金利政策を解除し、短期金利にマイナス金利を適用するイールドカーブ・コントロールを撤廃しました。政策変更の主な理由は、企業収益の改善や人手不足を背景とした賃金上昇と、物価の緩やかな上昇の好循環が確認されたことに影響しています。
マイナス金利政策の解除後も、金融機関の多くは短期プライムレートを据え置く見込みであるため、変動金利の返済負担がただちに上昇する可能性は低いでしょう。
ただし、金融機関が優遇幅を縮小することで、新規借入の金利は上昇するかもしれません。
また、将来的に日銀が追加の利上げをする可能性も考えられます。
金利が上昇局面にあるなかでマイホームを購入する場合は、専門家にも相談しシミュレーションを活用したうえで、借入額や金利タイプなどを選ぶことが重要となります。
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監修・情報提供:馬場 愛莉(2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級))
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