【第112回】お庭を素敵に演出! かしこいガーデニング基礎講座
2022.09.13
新しい家づくりにかかせないお庭。素敵にしたいけど、建物に予算を取られてしまって後回しになりがちです。「家庭」とは「家」と「庭」と書くように、建物だけでは殺風景になりがちです。植物の選び方やメンテナンスの仕方、予算の取り方などポイントを知ってお気に入りのエクステリアを実現しましょう。
<INDEX>
【1】エクステリア計画の基礎知識
【2】素敵なエクステリアを実現するデザインのポイント
【3】植物を選ぶ
【4】メンテナンスについて
【1】エクステリア計画の基礎知識
エクステリアとは外構のことで、お庭に加えて、カーポートや門扉、門柱、フェンスなど、家の外部に設置するもの全てを総称して呼びます。
①エクステリアはイメージアップと防犯面に役立つ
住宅の写真を撮った時に「2割以上、緑の面積があると魅力的に映る」という法則があり、マンションや戸建ての広告のCGパースなどをじっくりご覧いただくと緑が多く描かれているのにお気づきになると思います。そのぐらい人にとって植物が身近にあるということは、生活するうえで大切な要素であり、本能的にそのような住まいに惹かれるといえます。
また防犯面においても、「割れ窓理論*」にあるように、美しく整った環境では犯罪は起きにくく、窓が割れて手入れのされていない場所で起こるといわれていますので、整然としたエクステリアにするのは犯罪を回避するためにもとても重要です。
*アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した環境犯罪学上の理論のこと。
②エクステリアのポイント
エクステリアを計画する上で大切なのは、どの範囲をエクステリアや庭とするかを決めること。
最近では、屋外でありながらリビングのように過ごせる「アウトドアリビング」が流行っています。室内のリビングをデッキと繋げてくつろいだり、お風呂場とつなげてサウナを楽しんだり、キッチンとつなげてハーブガーデンを楽しんだりといろいろな楽しみ方が広がっています。ご自身のライフスタイルに合わせて、エクステリアや庭をどう室内空間とつなげて快適に過ごすかを考えてみてはいかがでしょうか。
植栽部分の面積は大きければ大きいほどメンテナンスに時間はかかりますので、どの程度お庭のお手入れを楽しみたいかも考えて計画をするのもポイントです。植栽の位置は、部屋からの眺めや近隣からの目隠しとしても有効なので、植物の高さや量なども計算してつくると良いでしょう。
またエクステリア周りに電源や外部水栓を計画するのも忘れないようにしましょう。
③エクステリアの予算は、総予算の8%〜10%が目安
上記は、あくまで目安となります。平均すると180万前後の方が多いようです。ただしカーポートを2台分にしたり、防犯設備などを充実させたりと、設備系にこだわる場合はその分がアップします。
また、外壁材や植栽などにもこだわれば、その分プラスになる可能性があります。
「エクステリアは後でもできるから」と後回しにする方が多いですが、 ポストや門扉、植物が無いとせっかくの新築が美しく映えませんし不便な点もあるので、最初からしっかり計画に入れておくことが大切です。
【2】素敵なエクステリアを実現するデザインのポイント
①オープンタイプかクローズタイプかを決める
以前はプライバシー上の理由などからフェンスや門扉を付けるのが一般的でしたが、最近ではフェンスなどを設けないオープンタイプも人気があります。土地が広くない時に有効的に利用できる事と、オープンにしている方がかえって泥棒など丸見えになるので、不審者対策としてセキュリティ上も有利であるということが認知されてきたためだと思われます。
オープンでもクローズでもまずは、最初にタイプを決めることが必要です。それぞれのポイントを知り、エクステリアに何を求めるのかを考えて選択するのがいいでしょう。
②全体のデザインテイストを決める
庭やエクステリアもインテリアと同様にデザインテイストがあります。必ずしもインテリアと合わせる必要はありませんが、少なくとも家の外観デザインのテイストと合わせると全体的にまとまって美しく仕上がります。
そのテイストは、ここにあげるもの以外にもありますが、最近人気のあるものをいくつかご紹介します。
- シンプルモダン
- ナチュラルモダン
- フォーマルモダン
- 和モダン
- 雑木の庭
- アーキテクトモダン
- フレンチアンティーク
- 南欧風エレガント
- 西海岸風ビンテージ
【3】植物を選ぶ
植物は生き物なので、マニュアル通りにいかない事もありますが、それでもそれぞれの植物の性質や傾向がありますのでポイントを知って正しく選びましょう。
①日当たりを確認する
日当たりは大別すると、日向、半日陰、日陰となります。よく勘違いされるのは、北側でも全面道路が広いなどで明るい場合は「半日陰」と判断してしまうという事です。
植物にとっての日当たりは直射日光が何時間当たるかということで、日向とは直射日光が1日で平均4~5時間以上当たる場所、半日陰は直射日光が2~3時間当たる場所、日陰とはそれ以下の場所の事であり、直射日光があたらない建物の北側は明るかったとしても、「明るい日陰」ということになります。
植物によっては、半日陰~日陰を好むものもあり、全ての植物が日向を好む訳ではなく、シェードガーデンと呼ばれる日陰の為のガーデンも人気があり、最近は本も多く出版されています。
とはいえ、やはり日当たりを好むものは多く、特に果実を楽しむものや、花を綺麗に咲かせたいものなどは、南向き~東南向きが最適です。
また、ここ例年は酷暑続きで庭に出るのも…という方も多いかもしれませんが、コンクリートで覆われた地面より、緑に覆われた庭の方が体感温度は低くなるといわれています。地面を這うように育つグラウンドカバープランツのグレコマなども取り入れてみてはいかがでしょうか。
②常緑樹なのか、落葉樹なのかを確認する
植物を選ぶ時に、常緑樹なのか落葉樹なのか、下草であれば、多年草なのか、一年草なのかを確認する事が大切です。常緑樹の長所は落ち葉が出ないのでメンテナンスが楽である事、1年を通して葉があるので冬でも緑を楽しめる点です。短所は樹種が少なく、葉色が濃いモノが多い点です。
落葉樹の長所は、昔から省エネの家づくりとして建物の南面に植える事で、夏は葉が茂って太陽を遮る為涼しく、冬は葉が落ちる為に、程良く太陽の光を取り入れる事が出来る点です。また樹種も多く、葉も爽やかな印象のものなども多いです。短所は、葉が落ちた後の掃除に手間がかかるのと、冬は彩が失われるので寂しい印象になりがちです。
多年草の長所は、常緑樹と同じく一年中緑が繁っている為に、冬でも緑を楽しめる点と、メンテナンスが楽である点です。短所は樹種が限られる点です。一年草は、毎年植え変えなくてはいけないという手間がありますが、種類も多く寂しくなりがちな冬の花壇に色を添えてくれます。
宿根草(しゅっこんそう)とは、冬に地上部のみが枯れ、春になるとまた芽が出るものになります。植え変えの手間はありませんが冬は寂しくなりますので、選ぶ際は場所やバランスなどの配慮が必要です。
写真左:常緑樹があると季節を問わず緑を楽しめる。 写真右:落葉樹は冬には葉が落ちる為、日差しが入る。
③シンボルツリーにお勧めの樹種
家の顔となるシンボルツリーはお庭の象徴的な存在となりますので、好みに合ったものを選びましょう。建物のデザインに合わせやすく、病気や害虫が少なく管理が楽なものをお勧めします。
- シマトネリコ
- オリーブ
- ユーカリ
- ソヨゴ
- アオダモ
【4】メンテナンスについて
植物は生きていますので、お手入れをしないと枯れてしまい美しさを保てません。
マニュアル通りといかないこともありますが、まずは基本を知りましょう。
①水やり
- ・基本は土の表面が乾いたらたっぷりとあげます。 湿っている間にあげると根腐れをおこします。
- ・水の温度にも気をつけます。夏場は気温の上がらない早朝と夕方に、冬場は凍らない様、午前中のみあげます。
②肥料
- ・「肥料の三要素」は窒素(N)、リン(P)、カリ(K)、これにマグネシウムとカルシウムを加えて5要素が必要です。
- 植物によってバランスは違いますので確認しましょう。
- ・有機質肥料・・・良く発酵しているかが重要
- ・無機質肥料・・・水に溶けてすぐに効果がある
- ・効果的な肥料のやり方は、元肥に緩効性化成肥料や有機質肥料を使用し、
- 追肥で発芽後や開花後などに緩効性肥料を幹から10センチ程度離した位置付近に同心円状にあげます。
③剪定
- ・樹形を整えるだけでなく、病害虫から守ったり綺麗に花を咲かせたりする為にも大切です。
- ・時期は、植物によって違いますのでそれぞれ本やインターネットなどで調べていただきたいですが概ね常緑樹は春先3~4月、
- 落葉樹は葉が落ちてから11~2月ごろが多いです。
ガーデニングは、四季折々の植物を楽しむこと以外にも、家族で週末にのんびりと過ごす憩いの場など、様々な用途で活躍します。せっかく家を建てるのであれば、エクステリアも一緒に計画することで、より快適な住まいになることは間違いありません。住宅展示場のモデルハウスには、参考になるエクステリアのデザインが沢山あります。ぜひ週末などに出かけて、イメージを膨らませてみてはいかがでしょうか。
監修・情報提供:一級建築士 吉田 美帆
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