【第107回】 憧れのアイランドキッチン! 使いやすい間取りのポイント
2022.03.14
「新しいお家になったら、開放感のある広々とした明るいキッチンでお料理したい」。「暖かい日差しを受けながら家族や友人とホームパーティしてみたい」。そんな願いが叶うキッチンがアイランドキッチンです。そもそもアイランドキッチンとはどんなものかご存知でしょうか? アイランド(=島)のようにキッチンをぐるっと一周できるようなレイアウトのキッチンのことを指します。片側が壁に接し一周できない場合には、ペニンシュラ型(=半島)と呼ばれています。今回は皆さん憧れのアイランドキッチンについて、どうすれば使いやすくできるのかポイントを交えながらお伝えします。
<INDEX>
【2】アイランドキッチンのメリット・デメリット
【3】アイランドキッチンの最適な間取りは
【1】アイランドキッチンの特徴
アイランドキッチンは対面式キッチンの一つのカタチです。大きな特徴は3点です。
1.キッチンカウンターの奥行きが広いので、使い勝手も抜群
日本のキッチンカウンターの奥行きは約65cmが一般的です。これは昭和の頃から変わらずコンパクトな日本の住まいに適するように、冷蔵庫などに合わせた寸法として広まってきました。一方でアイランドキッチンの場合には、作業カウンターだけでなく、ちょっとした食事も取れるようなスペースとして90cm程度まで広くして、お料理だけでなくお食事などもカウンターで楽しめるような奥行きになっているので、ご家族に合わせて様々な使い方ができます。
2.キッチン自体の周りを一周できるので複数人で調理がしやすい
アイランドキッチンでは、ご家族やご友人と一緒にお料理ができるのも特徴の一つです。複数人で作業しても、キッチン周りのあらゆる方向から通路が確保されていますので、作業がしやすくなっています。ある人はコンロまわり、もう一人はシンクまわりと自分のペースを維持しながらお料理を楽しむことが可能です。
3.キッチン本体の上部に吊戸棚がないので開放的
ダイニング空間と一体感のあるアイランドキッチン。吊戸棚がない分、より開放的な雰囲気で家事ができます。逆に、今まで吊戸棚にしまってあった季節物の調理器具やお皿などの収納は、代わりのスペースを考えておくことが重要です。
【2】アイランドキッチンのメリット・デメリット
アイランドキッチンは、家族や友人が集まる空間としても、毎日の家事効率の面でもメリットがたくさんあります。しかしそれと同時に、通常のキッチンより広いスペースが必要であったり、注意すべきポイントも何点かあります。計画してから、「こんなはずでは…」とならないためにも、事前にアイランドキッチンのメリットとデメリットを覚えておきましょう。
<アイランドキッチンのメリット>
1.家族との距離が近づく
アイランドキッチンは仕切り壁などを作らず、キッチンスペースがダイニングやリビング空間と一体になっています。そのため、直ぐ近くにご家族の様子が感じ取れます。ダイニングテーブル等で勉強するお子さんの様子や、ソファでくつろぐご家族と、コミュニケーションをとるだけでなく、リビングでテレビを見ながら家事もできたりするのもいいところです。
2.明るく視線も広がるキッチン
独立型のキッチンと比較して、キッチン本体の周囲に間仕切り壁の少ないアイランドキッチンは、リビングに差し込む明るい日差しがキッチンにもそのまま届きます。自然の光に包まれながら、リビング・ダイニングに向けて視界も広がるため、快適にお料理ができる空間です。
3.回遊動線で家事の効率もアップ
キッチンの周りをぐるっとまわれるアイランドキッチンなら、複数人でキッチン作業が可能なので、それぞれに分担することもできます。料理の配膳や終わった後の片付けも、四方を動き回れるので、動作の制限が少なく効率よく動けます。
イメージは、「お料理教室」のように和気あいあいと作業することに適しています。
4.見た目がスタイリッシュ
キッチン自体がリビング空間からも見えるアイランドキッチン。それ自体が家具のようなスタイリッシュなデザインのキッチンが豊富です。リビング側でよく使う文房具や小物等を収納できるスペースも備わった商品なども多くあります。
アイランドキッチンは、キッチンをインテリアとして考えるため、全体的にすっきりとしたお部屋づくりにも有効です。
<アイランドキッチンのデメリット>
1.作業「音」がリビングに漏れる
シンクでのお皿洗いの水の音がテレビと重なって、騒音に感じられることがあります。ステンレスシンクにありがちなことですが、勢いよく出る水流でリビングの家族から苦情が出ることもあります。食器洗浄機ではなく手洗いを検討されている方は、「静音シンク」をおすすめします。「静音シンク」はステンレス製のシンクの裏側に補強がされているタイプで、騒音を抑えて気兼ねなく水仕事ができるようになります。
2.調理時の「匂い」に注意
揚げ物や焼き物など、匂いや煙が出る料理には要注意です。リビング階段や吹き抜けが同一空間にある場合には、お料理の匂いなどがお部屋中に広がってしまう可能性があります。その場合にはレンジフードをうまく活用して、上手に煙を吸ってもらうようにしましょう。コンロをつけると自動でスイッチが入るタイプや、掃除を10年間しなくていいもの、お湯をタンクに入れると自動でレンジフードのファンを洗浄してくれるものなど、家事が楽になるタイプのレンジフードも多く出ていますので、検討してご希望のタイプをチェックしてみましょう。
3.来客時の「プライバシー」に注意
リビング空間と一体となったアイランドキッチンでは、レイアウトによってはキッチンの内部まで見通せてしまうこともあります。リビング・ダイニング側からはスタイリッシュでも、反対側からキッチンを見ると生活感が出てしまうこともありますので、来客時の視線のコントロールなどキッチンレイアウトに工夫が必要です。
【3】アイランドキッチンの最適な間取りは
アイランドキッチンを実現する上で、考えるべき間取りのポイントを3点ご紹介します。
1.空間の広さ
アイランドキッチンに必要な広さは、目安として6帖ぐらいが必要です。キッチン周囲に通路をとるだけでなく、吊戸棚がない分、大容量に収納できるスペースも確保しておいた方がいいでしょう。パントリーやキッチンスペースの一部の壁面を収納にするなどもあります。スペース的に難しい場合には、ワイヤーフレームなどを使って吊り下げる収納もおすすめです。
2.構造計算の観点から柱が増える可能性もある
キッチンスペースの幅もポイントになります。ダイニングに対して正対してレイアウトする場合を考えてみます。キッチン本体の幅は一般的には2.5m程あります。両サイドに通路を80cm取るとした場合に、お部屋の空間としては柱から柱まで約2.5間(4.5m)の幅が必要と考えられます。
この場合、構造計画の観点から考えると2.0間(3.6m)を基準に日本の家は考えることが多いので、それよりも空間の幅が広い部屋の場合には、梁の高さが大きくなったり、柱が増える可能性もあります。開放的なスペースを希望していても、柱などが増えてしまうと照明計画や家具レイアウトにも関連しますので、事前に確認する必要があります。
3.設備計画も重要
アイランドキッチンに必要な設備について考えてみます。
例えば空調について、キッチンのあるスペースがリビング・ダイニング空間と一体となっている場合、コンロ等で発生した熱や蒸気等を排出するために、ハイパワーのエアコンをつけられるよう計画するといいでしょう。照明器具についても、キッチンエリアに設置する照明器具もリビングから視線に入ってきます。デザイン的にも機能的にも満足できるものを選定すると、空間にまとまりが生まれます。お料理をする際に、最適な明かりの色は食材などの色をそのまま表現できる「昼白色」と言われています。逆にリビング等のくつろぎ空間に用いると最適な明かりの色は「電球色」のような赤い明かりです。また、光の量をコントロールする「調光」機能だけでなく、明かりの色をリモコンで変えることのできる「調色」機能のある照明もあります。
アイランドキッチンで何より重要なのは、コンセントのレイアウトです。間仕切り壁のような、電気の配線が通せるスペースが取りにくいため、コンセントの位置や数など注意が必要です。キッチンカウンター上で家電製品を使いたい場合に、近くにコンセントがないと、配線が移動の邪魔になってしまうため、キッチン本体に設置するか、できない場合には床にコンセントを埋め込むなど工夫が必要です。
こういった設備のレイアウトなども、キッチンを使いやすくする秘訣です。
仮にアイランドキッチンがレイアウトできないような間取りだったとしても、そのエッセンスを取り入れて、ペニンシュラ型(コンロの側面だけが壁についている)としたり、キッチン本体の幅をコンパクトにするなど、アレンジ次第で理想のキッチンを実現できます。キッチンの使い方は人それぞれですが、実際のモデルハウスの中でレイアウトされている様々なキッチンを体験して、理想のキッチンを探してみてはいかがでしょうか?
監修・情報提供:金内 浩之(一級建築士)
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