ライダース・パブリシティが運営する全国の住宅展示場ガイド【家サイト】

世界のモダンハウス

世界各地の参考にしたい個人住宅を順次紹介していきます。
住宅展示場で実物を見る前にイメージを膨らませ、あなたの家づくりのヒントにしてください。

【第5回】壁が呼吸する家

車庫側からのファサード。二階の開口を覆うパンチングのコールテン・スチール壁は白い壁とも調和している。

周囲に溶け込む穏やかな外観

 逆三角形をしたインド大陸の南端にあるケーララ州は、海を越えればモルディブの島々やスリランカにも近い風光明媚な土地。トリチュールはその内陸の中央にある人口32万人の都市だが、街並みは整然としており、住みやすい都市として知られている。初夏には日傘を乗せ、美しく飾り付けられた象たちがねり歩くプーラムの収穫祭が行われ、多くの見物客を集める。熱帯性の樹木が多いネリッカヌ地区に立つモダンな住宅。設計したのは同市を拠点にする建築事務所、リジョ・レニイ・アーキテクツ。30代の夫婦二人が2005年に設立したスタジオながら既に数多くの建築賞を受賞している。

明るく開放感のある庭のような内部

中央のボイド空間※から取り込まれた光は内部を明るく照らす。(※ボイドとは建物内にある空洞の空間のこと。)
細長い敷地を三つに分け、二つの居住ボリュームを中央のボイド空間でつなぐ。

 外見はインドの伝統的なデザインを施した茶色の格子と白い壁で抑制の効いた目立たない表情だが、内部に一歩入るとインドにいるとは思えないようなシンプル・モダンな現代住宅という印象を与える。中央のボイドから取り込まれた光は内部を明るく照らす。これこそ施主の最も望んだものだと設計者は言う。施主は、以前この敷地に立っていた古くすすけた暗い家で暮らしながら、光に満ちた家を夢見て、その計画を育んでいたのだそうだ。建物の西側の細い公道、北側の私道の両方から挟まれたウナギの寝床のような狭い建築面積のハンデをどう克服して空間を構成するかが大きな課題であった。自ずと中央に換気(通気)のためのボリュームを取ることが必要となる。それによって住む人には心の豊かさとゆとりを与えることができる。

内部は階層差で変化をつける

トップライトから自然光がたっぷりと入る家族のコミュニケーションの場。
階段にそって交互に振り分けることで変化がある空間になる。

 細長い敷地は二分割され、できる限り合理的な配置で設備機能を持つスペースがそれぞれに割り当てられている。その中央のボリュームはランドスケープを施されたトップライトから自然光がたっぷりと入るアトリウムとなり、ボイドではありながら、プラントを配して広場のようなコミュニケーションの場となっている。さらに東西を二つの階段空間で結びつけ、上層階は階ごとのフラットなものとはせず、階段にそって交互に振り分けているので内部は変化のある空間になっている。

【コールステン・スチール】
モダン建築の外装材として意匠的にも好まれる材料。
コールテン・スチールの穴から漏れる陽光は光の円を描く。

 建物の北側と南側は日本の現代住宅なら、そのままであえて全体を外部に晒すものもあるが、ここでは壁を立てている。壁はしっかりとプライバシーを確保できて、しかも、この地方のモンスーン気候の荒々しさにも耐えうる耐候性のある頑丈なものでなくてはならない。その結果選ばれた素材はコールテン・スチール。モダン建築の外装材として意匠的にも好まれる材料である。スチールながら冷たさがなく、経年変化によってサビが味のある色とテクスチャーをつくりだす。デザイン的に開けられた穴は、均一ではなく大きさに変化をつけ、そこから漏れる陽光は階段に光の円を描いて楽しい。

敷地の狭さが面白いデザインを生み出し、豊かな空間へとなることも。

 この家のように敷地の狭さは住宅計画を制限するハンデではあるが、見方を変えて対応を考えればその特殊性が住宅に個性を与えたり、建物内外に面白いデザインをも生みだしたり、住まい方の工夫を考えるきっかけともなることが分かる。日本ではハウスメーカーの住宅でも施主の希望に応じて個性的なデザインに対応出来るところも出ている。建築家顔負けのクールなデザインも可能である。敷地条件も相談次第だ。住宅展示場で自分の希望を相談してみよう。

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